BIS年次報告、ステーブルコインは通貨の要件を満たさず

BIS年次報告、ステーブルコインは通貨の要件を満たさず

BIS(国際決済銀行)は、現在のステーブルコインの設計は通貨の重要な要件を満たしていないとし、新興国でドル化が加速する可能性を警告するとともに、中央銀行マネーと商業銀行マネーを接続する「統合台帳」を支持した。

USDT
USDC

ファクトチェック
BIS(国際決済銀行)の公式プレスリリース(p260623.htm)と『Annual Economic Report 2026』のPDFは、現在のステーブルコインが、額面での一価性・償還可能性といった貨幣の重要な性質を欠き、構造的な欠陥を抱えているとBIS(国際決済銀行)が判断したことを直接裏付けている。またBIS(国際決済銀行)は、中央銀行マネーを基盤とする「統合台帳」が次世代の通貨・金融システムの土台になると支持している。The Blockもこれらの認定を裏付けている。主張にある「integrated ledger」という表現は、BIS(国際決済銀行)の「unified ledger」およびトークン化の統合を忠実に言い換えたものであり、「貨幣に求められる中核的な信認要件」もBIS(国際決済銀行)による貨幣の性質という整理に沿った表現である。
要約

BIS(国際決済銀行)は2026年版年次経済報告で、ステーブルコインは単一性、弾力性、相互運用性、完全性の各要件を満たしておらず、通貨として機能するために必要な基準に達していないと指摘した。1ドルとの連動から流通市場で価格が乖離し得ることや、流入した現金に連動して発行される仕組みにより、ステーブルコインは現金預金よりもETFの持ち分に近い性質を持つとした。さらに、テザー(USDT)とUSDCを中心とするドル連動型トークンが新興国で新たなドル化を促していると警告した。トルコ、アルゼンチン、ナイジェリアなどでは、市民が正式な金融チャネルを介さずにドル建てエクスポージャーを得る手段として利用しているという。2026年5月末時点で約32億ドル規模のステーブルコイン市場の99%超が米ドル建てであることから、BIS(国際決済銀行)はこの集中が途上国経済にとって構造的な問題になると指摘し、自己管理型の仮想通貨は従来の銀行規制を迂回できるため、従来型の預金ドル化より抑制が難しい可能性があるとした。また、市場規模が1兆ドルから3兆ドルに拡大しても、経済生産への純影響はなお「小幅なマイナス」にとどまるとし、トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行マネーを組み合わせる「統合台帳」を提言した。Project Agoraを引き合いに、このモデルは技術的に実現可能だとした。

用語解説
  • 単一性: 発行体にかかわらず、1単位の通貨が一貫して基軸となる通貨の1単位と等価であるべきだとする通貨の性質。
  • ステーブルコイン・ドル化: ドル連動型ステーブルコインへの資金シフトにより、とりわけ新興国で自国通貨の利用や影響力が低下する現象。
  • 統合台帳: トークン化された中央銀行準備預金と商業銀行マネーを単一システムで接続するために提案された共通インフラ。