ロシアの捜査当局は、バイナンスがロシアから正式に撤退してから約2年が経過していたにもかかわらず、テロ資金供与事件でIT専門家ユーリ・ベレンキイ氏を捜査する際、バイナンスから提供された個人情報と取引データを使用した。ブルガリアの在留許可を持つロシア旅券所持者で49歳のベレンキイ氏は、2023年1月から2024年3月にかけて、ウクライナの受取人に700ドル超相当の仮想通貨を送ったとして起訴されている。ロシア当局は、この支払いが、モスクワがテロ組織に指定している軍事部隊「アゾフ」とつながりのある集団を支援したと主張している。ベレンキイ氏は現在もロシアの拘置所に収容され、裁判を待っている段階であり、これらの主張については司法判断が下されていない。バイナンスは2023年9月27日、ロシア事業全体をCommEXに売却すると発表し、同市場はもはや自社のコンプライアンス戦略に適合しないと説明するとともに、継続的な収益分配や買い戻しの選択肢があることを否定した。ロイターが確認した文書によると、その後の法執行機関からの要請により、binanceholdings.ruドメインを使用するアドレスから、ベレンキイ氏の生年月日、住所、電話番号、旅券番号、旅券の写し、ブルガリアの在留許可証が提供された。捜査当局はまた、同じウォレットに資金を送った他のバイナンス顧客に関する情報も求めたが、バイナンスがその顧客らを特定したかどうかをロイターは確認できなかった。この事件は、バイナンスがかつてのロシア取引所の運営を秘密裏に続けていたことを示すものではない。一方で、現地事業の終了と、過去の顧客データの削除とは異なることを示している。金融会社は、マネーロンダリング対策や記録保存に関する規則に基づき、こうしたデータの保管を義務付けられる場合がある。バイナンスは、適用される法律、プライバシー要件、規制要件に従い、適法な法執行機関からの要請に協力していると説明した。また、当局が申し立てる容疑や、情報開示後のその利用方法を同社が決めるわけではないとしている。同社の公開ガイドラインでは、管轄権を有する機関が発行した有効な裁判所命令、警察命令、または令状を含む裏付け書類を求め、要請には法的根拠を明記するよう定めている。バイナンスは追加情報を求めることができ、有効な命令や令状によって禁じられていない限り、ユーザーに通知する場合がある。また、記録保存の要請については90日間記録を保持でき、更新も可能だとしている。公開記録からは、どのバイナンスの法人がベレンキイ氏のアカウントを管理していたのか、どの法律に基づいて情報の提出が義務付けられたのか、また同氏が通知を受けたのかは明らかになっていない。この事例は、KYC(顧客身元確認)によって、仮名性のあるブロックチェーンアドレスを氏名や書類と結び付けられることも示している。一方、ゼロ知識証明を利用した提案では、ユーザーが身元情報のファイル全体を繰り返し共有することなく、コンプライアンス上の属性を証明できるようにすることが目指されている。ベレンキイ氏のブルガリアの在留許可証は、欧州のデータ保護に関する問題の可能性を示すが、入手可能な事実からは、同氏がEU域内のバイナンス法人を利用していたことや、開示にGDPRが適用されたことは確認できない。GDPRが適用される場合でも、法律上の保管義務がある場合や、法的請求に必要な場合、消去する権利は無条件ではない。仮想通貨を自己管理に移したり、アカウントを閉鎖したりすることで、将来の取引所利用を制限することはできるが、公開ブロックチェーン上の記録や、仲介業者が法律上保存を義務付けられているデータを消去することはできない。企業は会社としてのスケジュールに基づいて市場から撤退できる一方、個人データが消去されるかどうかは、法的なスケジュールに左右される。