欧州中央銀行(ECB)総裁兼欧州システミックリスク理事会(ESRB)議長のクリスティーヌ・ラガルド氏は、米国と中国で開発された人工知能(AI)モデルへの欧州の依存が、重要なサービスを脅かし、金融システム全体のリスクを増幅させる恐れがあると警告した。ユーロ圏の重要銀行の9割近くが生成AIを利用しているほか、調査対象となったEUの証券市場関連企業の7割がAI投資を増やす見通しを示している。世界のAIコンピューティング能力に占める欧州の割合は約5%で、米国の約75%を大きく下回る。2025年に欧州が生み出した注目すべきAIモデルは2つだったのに対し、米国は59、中国は35だった。ラガルド氏は、欧州のAI能力の強化、データセンターとコンピューティングインフラの拡充、AIサプライチェーンで重要な役割を担うことを求めた。また、自律性を高めるAIエージェント、サイバー攻撃、市場集中、最先端モデルへのアクセスを巡る地政学的な制限がもたらすリスクも強調した。2026年6月に米国が輸出規制措置を発動し、欧州から2つの先進モデルへのアクセスが一時的に停止されたことは、欧州域外の政策決定が、銀行、決済、医療、輸送、国境審査、税務行政で利用されるシステムに影響を及ぼし得ることを示した。欧州のデータセンター容量不足は今後10年間で6倍超に拡大する見通しで、差を埋めるには最大6000億ユーロかかる可能性がある。一方、AIの急速な導入により、生産性は10年間で最大4%上昇する可能性がある。